【本記事は、『Bros Business』2010年3月号に掲載されました】
さて、今回からグローバルな投資家を目指す海外在住の皆様と一緒に、「なぜ今海外不動産投資なのか、そして、どういう国の不動産に投資したらいいのか」考えてみたいと思います。
日本人にとっての海外不動産投資の意義は?
まず、日本人にとって海外不動産投資にどのような意味・意義があるのでしょうか?
1.資産の分散の必要性
円資産のリスク回避・目減り防止
2.円高の活用
G20中最悪の財政国家がさらなる赤字国債の発行。円高は長くは続かない
3.安全、安定的な資産運用
為替が強くなる経済成長国で、無理なく得られるキャピタルゲイン
4.レバレッジの活用
世界的な低金利の今、日本人でも外資銀行から借り入れが可能
5.リタイアメントを海外で
物価の安いアジアなどで、海外リタイアメントライフをエンジョイする
以上は、一般の日本人にとっての海外不動産の投資意義ですが、これ以外にも海外在住の日本人投資家にとっては、以下のメリットもあげることができます。
6.非居住者(海外居住者)の税務メリット
海外在住中に海外不動産を運用して得た不動産収入や、譲渡して得たキャピタルゲインの日本での納税申告義務はない(また、一定の条件下では、海外不動産の非居住者相続人間での相続税は日本ではかからない場合がある)
7.プレセール案件で、確実なキャピタルゲインが得られる
一般の日本人には馴染みが薄いプレセール(未完成物件販売)という仕組みも、海外不動産の魅力のひとつであり、海外に居住する日本の方なら比較的理解しやすい仕組みです。
私は最近痛感することですが、日本の投資家は不動産投資を、インカム収益を狙ういわゆる年金のオルタティブ(代替)投資だと考えている人が非常に多いことです。
拙書『人民元で大儲け』を発刊し、日本のセミナーで為替と物件上昇のキャピタルゲインを狙うなどと、まじめに中国不動産のキャピタルゲインの魅力を語っていた当時、10人中8人は私を、疑いの眼で見ていました(その時、投資した方は、予想を裏切り想像以上のパフォーマンスをあげていらっしゃいます)。
実際、最近日本では、新築不動産を買うと、引渡しを受けた時点で10%近く価格が下がるのが、半ば常識となっているようです。
1990年代のバブル崩壊以降、日本では不動産は価値の上昇を期待せず、利回りを期待する年金タイプの投資商品なのです。
一方、なぜか日本以外では、新築販売物件はプレセールが常識であり、販売時から完成引渡し時には確実に価値が上がる仕組みになっています。
つまり、デベロッパーの完成リスクや販売リスクを、購入者が肩代わりする一方、リターンを享受できる仕組みが存在するのです。
このあたりの感覚を、現地で肌をもって理解できている海外在住の日本人には、上記の3.および7.は、理解が容易なはずです。
つまり、日本国内におられる方に比べ、海外に居住される方には、本来の不動産投資の目的であるキャピタルゲインを狙うというグローバルな投資スタイルを理解しやすいというメリットがあると考えますが、いかがでしょうか?
さらに、もうひとつ、これを読まれている中国在住の方にはもうひとつ、特権があります。
8.「中国不動産」を自己居住目的で購入できる
2006年7月から、中国に居住しない外国人の不動産購入を認めていません。
言い換えれば、中国で就労や留学ビザを取得されて1年以上滞在されている方は、中国の不動産を自己居住目的で購入することが可能です。
投資対象国をどう選定するか?華僑や中国人移民に注目
さて、それでは、どのような国の不動産に投資したらよいでしょうか?
対象国の絞込みのポイントを以下に列挙します。
1.経済が成長する国(GDPの伸び率と不動産価格の上昇には相関あり)
2.政治の安定している国(カントリーリスクの小さな国)
3.通貨が強くなる国(投資した国の通貨が上昇すれば、為替益も享受できます)
4.人口が増える国(住宅の需要が伸びます)
5.キャピタルゲイン課税、保有税が少ない国
6.過去の価格推移は、基本的には右肩上がりだが、一時的に不動産価格が調整している国
7.周辺近隣諸国と比較して割安感のある国(上昇余地が残されている可能性がある)
8.海外から資金を歓迎している国(外国人への規制がない国)
9.移民を受けいれている国(4.、8.および9.とも関連します)
10.華僑や中国人の移住民が多い国(人や資金の集まる国は不動産が上がります)
この中で、私が最近、特に注目しているポイントが10.の華僑や中国人が移住している国の不動産市況です。
2000年から始まった世界的な不動産ブームが、2007年に終焉し、2008年のリーマンショック前後で大幅な調整が始まりました。
ところが、2009年の初めから、底を確認し、急速に市場が回復している市場があります。
中国、香港、シンガポールそしてオーストラリアです。
これらの国で何が起きているのでしょうか?
これらの国には、明らかな共通点があります。
中国マネーの存在です。
ご存知のように中国は、2008年9月のリーマンショックの次の日から、それまでの金融引き締め政策から一転、金融緩和に転換、矢継ぎ早に貸出金利を下げ、2009年には金融機関に前年比100%増の貸出の多くが株や不動産などに流れ込んだ結果、上海、北京、シンセンなどでは年率20%以上上昇しました。
一方香港では、永住権取得(註)を目的とした中国大陸からの不動産購入ツアーにより、高級マンションが飛ぶように売れ、年率25%の上昇を記録しました。
また、オーストラリアやシンガポールも昨年は中国大陸からの移民希望の投資家が殺到して、不動産価格を押し上げていると言われています。
(グラフ)中国(上海)、香港、オーストラリアおよびシンガポールにおける住宅価格の推移
(Stasia Capital調査部作成)
なぜ、ここに来て中国大陸の富裕層が、海外不動産投資を活発化しているのでしょうか?
その要因は以下のように整理することができます。
1.中国の不動産が年々上昇している一方、2007年以降、海外の不動産価格が調整しており、海外不動産に割安感がでてきたこと
2.2005年7月から人民元がドルに対して、20%以上切りあがっており、海外留学、海外移住、海外旅行ブームの到来により、海外の資産に関心が向いていること(もともと、華人の海外志向は固有の文化)や、海外不動産の元建価格が安くなったこと
3.国際銀連カードの普及や人民元の為替規制の緩和、香港への居住権取得などにより、人民元が海外に出やすくなったこと
中国マネー(人民元)の動向に世界のマーケットが注目!人民元を追って大儲け?!
私は、2010年から2020年にかけては、中国ビジネスが新たなステージに入ると確信しています。
1990年代は、まさに改革開放で中国国内の市場経済体制を開始し、中国を世界の工場とすべく外資の導入を図りました。
2000年代はWTOの加盟を宣言し、外資の規制を撤廃、中国巨大市場を開放しました。
いわば、外資を呼び込むインバウンドモデルから2010年代は、いよいよ中国の資本が世界の市場に向う、いわばアウトバウンドモデルに移行する時代になるでしょう。
チャイナマネー(人民元)の国際化がキーワードとなります。
昨年初頭、中国政府は『上海を2020年までに国際金融センター』にすることを公約しました。
また、昨年の12月29日、注目すべきニュースが出ました。
温家宝首相と香港のドナルド・ツァン行政長官との間で、「近く香港で人民元のオフショア市場を開設するという合意がなされた」というニュースです。
これは、昨年から始まっていた人民元での貿易決済を更に進め、人民元での資本取引決済を香港で認めることを想定としています。
平たく言えば、香港への投資目的での人民元の海外送金を認めることです。
具体的なスケジュールはまだ明確にはされていませんが、諸外国からの人民元切り上げ圧力が高まる中、人民元を外に出し、国内のマネーサプライを調整する機能をもつことも目的にしていると考えられます。
つまり、現在政治問題となっている中国国内の不動産バブルを抑制することも可能となるのです。
この報道を受け、今まで以上に香港不動産に人民元が流れると予想する向きも出始めましたが、香港に一度出た人民元は、その後は、自由に世界中に流れることは自明の理です。
いよいよ人民元が世界の市場に影響を与える時代が到来するのです。
すでに、ここ2、3年前から、資源やIT関連の中国企業の海外企業買収が始まっています。
今後クリーンエネルギー、環境関連、ハイテク、バイオなどの海外企業買収が更に活発化するでしょう。
また、中国の機関投資家(生保、年金、投資基金)の海外不動産への投資、富裕層の海外不動産への投資もこれに続きます。
厳しく規制されていた人民元の外貨への交換が緩和へ向い、運用対象が限られていた国内資産から海外資産に大きなシフトが起きるのです。
まさに2020年に向け、人民元の国際化とともに、そのインパクトは、確実に海外マーケットに波及します。
(註)
香港のCapital Investment Entrant Scheme:
香港内で、外国人が650万香港ドル以上の投資商品(金融商品、不動産をふくむ)に投資すると、香港居留権を取得し、以降7年以上資産と居住権を維持することにより永住権を取得した後、市民権申請することにより香港特別行政区のパスポートを取得できるスキーム。2003年より開始。
※本稿は、出版前に執筆されたものであり、実際に掲載された内容と一部異なる箇所があります。