20

6月

2011

【コラム】第16回 頼りなく豊かなこの国に生まれて(2)

オフィスで働いていも、毎日元気な中国人スタッフを見ます。

彼らは、生活が豊かになっていく楽しさを日々感じているように思います。

今の日本にはまったくない光景で、二度と経験できないようなものです。

 

だからこそ、私の父親の世代が、私の世代に対して「もっとがんばらないとダメだ」と叱りつけるときの意味が何となくわかるのです。

がむしゃらにがんばった結果豊かになれた世代のいいたいことは、今、私が目の前で見ていることなのです。

豊かになるという根本的な意味がここに転がっているのです。

 

残念ながら、日本で暮らす私の世代は、今ここで経験できる豊かになる過程を経験できませんでした。

豊かになるという意味が、まったくわからないのです。

意味が経験的にわからない世代に、豊かになる過程を経験した世代が、「がんばれば何とかなる」と諭しても、伝わらないと思います。

 

私より上の世代は、豊かな生活に憧れて一生懸命働きました。

結果、日本は豊かになりました。

そして、私の世代に、貧しさで苦労しなくてもよい環境を与えてくれました。

ただ、上の世代は、豊かな生活を手に入れるために粉骨砕身しましたが、豊かになったあとのバトンタッチは必ずしも成功したわけではなさそうです。

もしかしたら、豊かになることは想像できても、豊かになったあとのことを想像することは難しいのかもしれません。

 

今の日本を覆う閉塞感の根本には、1990年代以降続いているように思う「共同体としての夢の喪失」が、夢そのものの喪失だけでなく、夢の抱き方や希望の持ち方すら喪失させている現況があるように思います。

 

頼りなく豊かなこの国に

何を賭け何を夢見よう

(浜田省吾「J. Boy」)

 

上海で暮らしていると、「頼れる豊かになろうとしている国に」何を想ったのか、何となくわかるような気がします。

私の兄は、小さいころ、毎日朝早く出勤して夜遅く帰ってくる父親に向かって「お父さんいつ帰ってくるの?」と尋ねたそうです。

私の父親が背負ったものを、私の母親も家庭を守りながら支え続けました。

言葉では言い表せないのですが、私の父親、そして母親が目指したものを、今、ここで少し理解できたような気がします。

 

「頼りなく豊かなこの国に」生まれた私は、これから「何を賭け何を夢見よう」とするのか、次の世代にどんなバトンを託すのか、じっくりと考えていきたいと思っています。

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