08

8月

2011

【コラム】第18回 中国高速鉄道事故に関する一考察(2)

今回の事故について、急速に世論を形成した背景は、単純にインターネットや携帯電話を使って情報が一気に広まったことは重要ですが、私はそれだけはないと思っています。

高速鉄道を利用する人びとは、中国国内でさまざまな建設・開発に従事するような「民工」や僻地で暮らす「農民」ではなく、ある程度の所得水準を満たした人びとです。

もし、炭鉱事故のような「民工」ばかりが犠牲となる人災ならば、多くの人が注目することはなかったように思うのです。

(何度も起こっているので、報道されても「また起きたか」ぐらいの印象になってしまう、という側面もありますが)

残念ながら、「民工」は世論を味方につけるには力がなさすぎて、人災そのものがなかったことにされてしまうのです。

ふだん「速い情報」にさらされている人びとが犠牲になったからこそ、注目が集まったと思うのです。

ある程度の所得水準を満たした人びとには、「『民工』は犠牲になっても仕方がないけど、『ある程度豊かな人びと』が犠牲になるのはありえない」という考えがあるように思うのです。

さらにいうと、「金持ちになって豊かになることは、自分を命の危険から遠ざけることにつながるはず」という考えに大きなダメージを与えたと思うのです。

 

遺族に対して、「賠償について、今ここでサインすると、50万元にあと数万元か追加される」というような話もあったようです。

「民工」ならば、目玉が飛び出るような額を提示されるので、ある意味納得してしまうようなところがあるのでしょうが(だからこそ弱い立場に置かれ、弱い立場のままになってしまう)、さすがにある程度の所得を稼いでいる人びとが多かったでしょうから、「金で解決する」姿勢に対しても憤りがあったのではないかと思います。

人災をあくまで闇に葬りたい、あるいはできるだけ早く解決して、あとで「あの事故はすべて解決した」という既成事実をつくりたいという態度が見て取れます。

犠牲者を「民工」と同等に扱うことで解決できると考えた当局の甘さも垣間見えます。

(なお、賠償については、もともと、鉄道のチケットには保険料が含まれています。チケット価格の2%が保険料となっているようで、相当額が蓄積されています。この金はどこにいった、という批判も出ているようです)

 

急激に発展した経済は、活気あふれる高度成長時代を築きました。

あまりにも急激だったため、いろいろなモノや人が時代についていけなくなって、脱落しはじめているます。

活気ある情況の裏に、いろいろな「疲れ」が見えはじめています。

中国政府の「パフォーマンス」のうまさと徹底ぶりは感心しますが、パフォーマンスだけでは通用しない社会的な「疲れ」には、どのような対処を施すのでしょうか?

少なくとも、責任逃れの天災に頼ったその場しのぎの対策では、何も変わらないと私は思っています。

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